職人気質について

良く聞く言葉で職人気質がありますが、国語辞典で職人気質の意味を調べますと、職人に特有の気質とあります。

ではこの職人特有の気質とはなにかと言いますと、自分の技能を信じ、それを誇りに思い、自分が納得できるまで念入りに仕事をする実直な性質、とあります。

これを別の表現で言いますと、自分の技能を信じ、それを誇りに思うことは、自分のすること、したことは正しいのであり、それは立派なことだという考えから、他人の言うことに妥協しないと言う頑固さであり、職人とは融通が利かない人だというイメージがあります。

また、自分が納得できるまで仕事をするという点は、時間と妥協しないことになり、このような人に何か物を作るのを依頼したら、その納期はいつまでなどとは決められないことになります。

なにしろ自分が納得するまでは手放さないのですから、外から見れば立派な完成品だと思えて、そう言っても、職人は、いや、駄目だ、まだ自分は気に入らないということになります。

これは、様々な分野で見られることで、職人に限らず芸術家にも相通じるものがあります。

ひとつの例として、ドイツを代表するベートーベンは、ある交響曲を作曲した時に、膨大な数の音符の中の一つにこだわったと言う話があります。

それは長時間にわたる曲のなかのたった一つの音符だったのですが、ベートーベンはそこに様々な音程の音符を書き、貼り付けました。

ベートーベン研究家がその分厚い一枚一枚を剥がしてみたら、最初の音と最後の音は同じだったのです。

これはまさに自分が納得できるまではその仕事は完成しないという職人魂そのもので、これは職人も芸術家も同じなのです。