ドイツのマイスター制度とは

日本の職人も高度な技を駆使していて、大勢の職人をまとめると親方と呼ばれますが、ヨーロッパでの伝統の国ドイツではこのような人をマイスターと呼びます。

マイスターとは、職人経験を経て公的な試験、いわば技能士特級などに合格して、弟子を教育する権利がある人を指します。

また、別の意味ではマイスターはその道の名人、達人の意味もありますから、ドイツでマイスターと呼ばれる人は普通の人とは区別をされて、尊敬されています。

このマイスター制度の歴史を概観しますと、13世紀の頃、ヨーロッパで中世の時代にさかのぼりますが、ドイツでは手工業が盛んでした。そこで次第に、徒弟、職人、マイスターという階級制度が確立され、具体的には徒弟が何年間かの修行をつんで試験に合格すれば職人になり、その職人が何年か修行を重ねてさらに上級の試験に合格するとマイスターの称号を名乗ることができるというわけです。

しかし、産業革命で機械化、大工業化が広まると、ドイツでも19世紀の半ば以降には工業化が急速に進み、それまでの手工業制度から大規模な機械化工業へと転換がなされました。

ところが、ドイツ人気質とでも言えますが、手工業者たちはこのような事態を甘んじて受け入れることなく、伝統と利益を守るために、同業者組合を設立して、マイスター制度を守りました。

現在でも続くドイツのマイスター制度には近代的な機械化産業では見られない上下間の暖かい人間関係があり、職業を通じて人格を形成するための教育活動も行っています。

古くても良いものは良い、新しいものにすぐには飛びつかないというドイツ人に共通する合理的な考え方のもとでドイツの職人を育てるマイスター制度は今でも健在です。